シャネル

シャネルのボタンにだけ刻まれた「ある約束」の話

yhongo

シャネルのジャケットのボタンを裏返したことがありますか。表には金のダブルCロゴ、そして裏には小さな文字が刻まれています。多くの人が気づかないその刻印には、シャネルが職人と交わした「見えないところにこそ本物を宿す」という約束が込められています。

見えない場所にこそ本質がある

シャネルのボタン裏に刻まれた文字は、見える場所ではなく見えない場所に本物を宿すというシャネルの哲学の象徴です。

シャネルのジャケットに使われるボタンの裏には「CHANEL」もしくは「MADE IN FRANCE」という文字が刻まれています。着用中は誰にも見えない場所です。しかしシャネルはその刻印を省略することを許しませんでした。

ココ・シャネルはかつてこう語っています。「エレガンスとは、見えないところにある」。これはファッションの話だけではありませんでした。人が見ていない場所でも手を抜かない。それが本物のエレガンスだという哲学が、ボタンの裏の刻印に凝縮されています。

参考:CHANEL公式「The Art of Detail」

ボタン一つに職人が費やす時間

シャネルのジャケットに使われるボタンは、パリの専門工房で一つひとつ手作業で製造されており、一つのボタンが完成するまでに複数の工程を経ます。

シャネルのボタンを製造しているのは、パリ郊外に工房を構える専門の職人たちです。金属の鋳造から研磨、ロゴの刻印、コーティングまで、すべての工程が手作業で行われます。

一つのボタンが完成するまでに要する工程は20以上とも言われています。大量生産が当たり前の現代において、なぜここまでコストをかけるのか。答えはシンプルです。ジャケットを脱いだとき、ボタンを外したとき、その瞬間に本物だとわかる質感を作るためです。

参考:Vogue「The Craftsmanship Behind Chanel Buttons」

カール・ラガーフェルドが受け継いだ哲

シャネルのボタンへのこだわりを現代に受け継いだのは、1983年からシャネルのクリエイティブディレクターを務めたカール・ラガーフェルドでした。

ラガーフェルドはシャネルのアーカイブを徹底的に研究し、ボタンを含む細部へのこだわりをブランドの核心として位置づけました。彼はデザインの打ち合わせの際、必ずボタンのサンプルを複数用意させ、ジャケット全体のバランスとの調和を一つひとつ確認したと言われています。

「ディテールがデザインを決める」というラガーフェルドの言葉は、ボタンの裏に刻印を施すというシャネルの哲学と完全に一致しています。創業者の約束を36年間守り続けた男の仕事が、今も一つひとつのボタンに息づいています。

参考:Harper’s Bazaar「Karl Lagerfeld’s Obsession with Detail」

本物を見分ける目を持つということ

シャネルのボタン裏の刻印は、本物と偽物を見分ける重要なポイントの一つであり、査定においても確認される箇所です。

ブランドバッグや衣類の査定において、ボタンの裏の刻印は真贋確認の重要な確認ポイントです。本物のシャネルのジャケットであれば、ボタンの裏に明確な刻印があります。その刻印の書体、深さ、位置に至るまで、本物には一定の基準があります。

見えない場所にある刻印が、本物の証明になる。これはシャネルが最初から意図していたことではないかもしれませんが、「見えないところに本物を宿す」という哲学が、結果的に真贋確認の基準にもなっています。

参考:Business of Fashion「How to Authenticate Chanel」

まとめ

シャネルのボタン裏の刻印は、見えない場所にこそ本物を宿すというシャネルの哲学の象徴です。20以上の工程を経て作られるボタン、カール・ラガーフェルドが36年間守り続けた約束、そして本物の証明になる刻印。手元にあるシャネルのジャケットのボタンを、一度裏返してみてください。そこに本物の証があります。

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