HERMÈS

ケリーバッグがグレース・ケリーの名前になった本当の経緯

yhongo
グレース公妃(1972年撮影)

エルメスのケリーバッグを知らない人はいません。しかしグレース・ケリーの名前がこのバッグに冠された本当の経緯を正確に知っている人は少ないです。一枚の写真、一人の女優から王妃になった女性、そしてエルメスの慧眼が重なった瞬間を知ると、このバッグへの見方が根本から変わります。

ケリーバッグはもともと別の名前だった

現在ケリーバッグと呼ばれているエルメスのバッグは、グレース・ケリーの名前が付く以前は「サックアクロワ(十字型バッグ)」という名前で販売されていました。

エルメスのケリーバッグの原型は1930年代に作られました。最初は馬具の鞍を収納するための鞍袋として設計され、その後旅行用のバッグとして改良されました。1935年に現在の形に近いデザインが完成し、「サックアクロワ」という名前で販売が始まりました。

このバッグはエルメスの顧客の間では評価されていましたが、世界的な知名度を持つ製品ではありませんでした。その状況が一変したのは、1956年の一枚の写真がきっかけでした。

参考:Hermès公式「The Story of the Kelly Bag」

一枚の写真が歴史を変えた

1956年にLIFE誌に掲載されたグレース・ケリーの写真は、エルメスのサックアクロワを世界的に有名にした歴史的な一枚です。

1956年、モナコ公国のレーニエ大公と結婚することが決まったグレース・ケリーは、妊娠中であることを報道陣から隠すために、エルメスのサックアクロワを使っていました。このバッグを腹部の前に持つことで、報道陣のカメラから妊娠を隠せると考えたのです。

その様子を撮影したLIFE誌の写真は世界中に配信され、グレース・ケリーが持つエルメスのバッグに世界の注目が集まりました。当時ハリウッドの大女優からモナコの王妃になったグレース・ケリーは世界で最も注目される女性の一人であり、彼女が持つバッグはそれだけで特別な意味を持ちました。

参考:Vogue「Grace Kelly and the Bag That Bears Her Name」

バーキンはなぜジェーン・バーキンの名前なのか、飛行機の中で起きた偶然の会話
バーキンはなぜジェーン・バーキンの名前なのか、飛行機の中で起きた偶然の会話

エルメスがグレース・ケリーに許可を求めた理由

エルメスはグレース・ケリーの写真が世界的な話題になった後、正式に本人の許可を得てバッグの名前を「ケリー」に変更しました。

LIFE誌の写真が世界的な話題になったことで、エルメスのサックアクロワへの問い合わせが急増しました。顧客の多くが「グレース・ケリーが持っていたバッグ」として問い合わせてきたため、エルメスはグレース・ケリー本人にバッグの名前を「ケリー」に変更することの許可を求めました。

グレース・ケリーはこの申し出を受け入れ、1977年に正式にバッグの名前が「ケリー」に変更されました。王妃の名前を冠することへのエルメスの敬意と、王妃自身がバッグへの愛着を持ち続けたことが、この名前変更を可能にしました。バーキンと異なり、ケリーは最初から名前のためにデザインされたのではなく、使われた後に名前を得たという点で独特の誕生の経緯を持ちます。

参考:Financial Times「The Kelly Bag: From Saddlebag to Royal Icon」

オークションと買取業者、結局どちらが高く売れるのか
オークションと買取業者、結局どちらが高く売れるのか

王妃が愛し続けたバッグの現在の価値

グレース・ケリーが生涯愛用し続けたケリーバッグは、現在バーキンと並ぶエルメスの最高峰の製品として、二次市場でも高い価値を持ち続けています。

グレース・ケリーは1982年に交通事故で亡くなるまで、ケリーバッグを愛用し続けました。彼女の死後も、ケリーバッグはモナコ王室との深い縁を持つバッグとして特別な地位を保ち続けています。

現在のケリーバッグの二次市場での価格はサイズ、素材、状態によって異なりますが、定価を上回る価格で取引されることが一般的です。特に希少な素材や廃版カラーのケリーはコレクターの間で高値がつきます。バーキンほど投資資産として語られることは少ないですが、ケリーもエルメスの品質と希少性を体現する製品として、長期的な価値の安定性を持っています。

参考:Harper’s Bazaar「The Enduring Value of the Hermès Kelly Bag」

バーキンが買えない本当の理由、エルメスが語らない「販売の構造」
バーキンが買えない本当の理由、エルメスが語らない「販売の構造」

まとめ

ケリーバッグはもともとサックアクロワという名前で販売されていました。1956年のLIFE誌の写真でグレース・ケリーが持っていたことが世界的な話題になり、本人の許可を得て1977年に正式に「ケリー」と命名されました。王妃が生涯愛用し続けたバッグは、現在も二次市場で高い価値を持ち続けています。手元にあるケリーバッグには、王妃と一枚の写真が生んだ歴史が宿っています。

ABOUT ME
この写真は、私が20年以上、冬になるたびに巻き続けているエルメスのマフラーのタグです。 時代や環境は変わっても、このマフラーが持つ上質さと身につけた瞬間の高揚感は、今も変わりません。少し柔らかくなった風合いには、長い時間と自分自身の歴史が刻まれています。 私にとってブランドは、意味のあるものを選び、手入れをしながら人生の一部にしていく体験そのものです。 当サイトが、あなたの10年後、20年後のストーリーのお役に立てれば嬉しいです。
記事URLをコピーしました