HERMÈS

エルメスのスカーフ一枚に込められた職人の「2年間」

yhongo

エルメスのカレと呼ばれるシルクスカーフは、90センチ四方の正方形に収まっています。しかしその一枚が完成するまでに、複数の職人が2年近くの時間を費やしています。なぜ一枚のスカーフにそれほどの時間がかかるのか。その制作過程を知ると、手元にあるスカーフの重みが根本から変わります。

2年間の制作期間の内訳

エルメスのシルクスカーフ一枚が完成するまでの約2年間は、デザイン、版の制作、染色、縫製という4つの工程にそれぞれ膨大な時間が費やされます。

最初の工程はデザインです。エルメスはアーティストにデザインを依頼し、そのデザインが承認されてから最終的な図案が完成するまでに数ヶ月を要します。エルメスのスカーフのデザインには乗馬、自然、神話、歴史など多彩なテーマがあり、それぞれのデザインに徹底したリサーチと制作が求められます。

次の工程は版の制作です。一枚のスカーフに使われる色の数だけ、シルクスクリーンの版が必要です。エルメスのスカーフは通常30色から45色を使用しており、多いものでは50色以上に達します。一つの版を作るのに職人が数週間を費やし、全ての版が揃うまでに数ヶ月かかります。

参考:Hermès公式「The Art of the Hermès Scarf」

45色を重ねる染色という芸術

エルメスのスカーフの色の豊かさは、一枚の生地に最大45回以上のシルクスクリーン印刷を重ねることで生み出されます。

エルメスのスカーフの染色は、版を一枚ずつ手作業で重ねていくシルクスクリーン技法で行われます。最初の色を刷り、乾燥させ、次の色を重ねる。この作業を色の数だけ繰り返します。30色のスカーフなら30回、45色なら45回。一枚のスカーフの染色だけで数週間を要します。

各色の版の位置が0.1ミリでもずれると、色の境界がぼやけ、デザインの精度が失われます。この精度を保つために、職人は一回一回の印刷を肉眼で確認しながら作業を進めます。機械では管理できない微妙なずれを人の目と手で修正する、この工程がエルメスのスカーフの色の精度と深みを生み出しています。

参考:Vogue「How Hermès Silk Scarves Are Made」

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フランスの工場でしか作れない理由

エルメスのシルクスカーフは、フランス・リヨンの専門工場でのみ製造されており、この製造地はブランドの品質基準と不可分の関係にあります。

リヨンは数百年にわたってヨーロッパ最高峰のシルク産業の中心地でした。エルメスのスカーフを製造するGandini社はリヨンに工房を構え、エルメスと長年の協力関係を持つ専門工場です。

リヨンのシルク職人たちは世代を超えて技術を継承してきており、その技術は他の地域では再現が困難です。中国やインドでより安価にシルクスカーフを作ることは技術的には可能ですが、エルメスが求める染色の精度と発色の豊かさを実現できるのはリヨンの職人だけだとエルメスは考えています。製造地への固執は感傷ではなく、品質への合理的な判断です。

参考:Financial Times「Lyon and the Art of Hermès Silk」

エルメスのスカーフを売って次のバーキンへ、小さな一歩の積み重ね方
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スカーフが持つ意外な資産価値

エルメスのシルクスカーフは近年、コレクターズアイテムとしての価値が高まっており、廃版になった希少デザインは定価の数倍の価格で取引されています。

エルメスは毎年新しいデザインのスカーフを発表し、旧デザインは廃版になります。廃版になった希少デザイン、特に著名アーティストとのコラボレーションや歴史的な節目に発表されたデザインは、コレクターの間で高値で取引されます。

バーキンやケリーと比較すると価格帯は異なりますが、スカーフはエルメスの世界への入り口として機能してきた製品です。2年間の制作期間を経て生まれた一枚のスカーフが、廃版後にコレクターズアイテムとして価値を増す。職人の2年間が時間を超えて価値として蓄積される、というエルメスの哲学がスカーフにも体現されています。

参考:Harper’s Bazaar「Hermès Scarves as Collectibles」

売ったお金でエルメスのスカーフを手に入れる、小さく始めるエルメスライフ
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まとめ

エルメスのシルクスカーフ一枚には、デザインから染色まで2年近くの時間が費やされています。45色以上を重ねるシルクスクリーン印刷の精度、リヨンの職人にしか実現できない発色の豊かさ、そして廃版後にコレクターズアイテムとして価値を増す現実。手元にあるエルメスのスカーフには、その2年間の時間が折り畳まれています。

ABOUT ME
この写真は、私が20年以上、冬になるたびに巻き続けているエルメスのマフラーのタグです。 時代や環境は変わっても、このマフラーが持つ上質さと身につけた瞬間の高揚感は、今も変わりません。少し柔らかくなった風合いには、長い時間と自分自身の歴史が刻まれています。 私にとってブランドは、意味のあるものを選び、手入れをしながら人生の一部にしていく体験そのものです。 当サイトが、あなたの10年後、20年後のストーリーのお役に立てれば嬉しいです。
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